TOPへ

末梢動脈疾患(PAD)

末梢動脈疾患(PAD)とは

末梢動脈疾患(PAD)とは末梢動脈疾患(PAD)とは、脚の動脈(とくに大腿動脈や膝下動脈など)が動脈硬化により狭くなったり詰まったりし、足への血流が不足する病気です。日本では70歳以上の約2割が何らかのPADを有しているとされ、心筋梗塞や脳卒中など全身の動脈硬化性疾患のリスク因子としても重要視されています。

PADの症状

PADに至る動脈硬化の変化は気づかない間にゆっくりと進行すると考えられています。動脈硬化のはじまりは、冷えやしびれ感を感じる程度で、無症候性(自覚症状がない)のことが多いとされます。その後、間欠性跛行(歩いているとふくらはぎが痛くなり、休むと回復する)がでるようになり、さらに進行すると、安静時痛(何もしていなくても足がズキズキ痛み、冷感が強くなる)が出現します。重症になると重症虚血肢(足の潰瘍・壊死)を呈します。「歩くと足が痛い」は加齢ではなく、PADのサインかもしれません

PADの検査・診断

当院では、ガイドラインに準じたスクリーニングと血行評価を行い、動脈硬化の進行度を早期に把握します。

  • 四肢血圧評価:ABI(足関節上腕血圧比)、AHI(下肢血行動態指標)(PMID: 27760183,特許番号:6497531):四肢の血圧測定を用いた検査法で、PADのスクリーニング検査になります。
  • 歩行負荷検査:トレッドミル歩行などの運動負荷後のABIを測定し、間欠性跛行の重症度を評価する検査です。
  • 血管超音波検査:超音波を用いて血管の狭窄や血流を可視化する検査法で、簡便で利便性の高い非侵襲的な検査です。
  • CTA:造影剤を用いてCT撮影することで、病変の狭窄度や石灰化などの病変性状を評価する検査です。
  • MRA:造影剤を用いて、または造影剤を用いずにMRI撮影にて、病変の狭窄度や病変性状を評価する検査です。
  • 下肢動脈造影:大腿動脈(足の付け根の動脈)や橈骨動脈(手首の動脈)から細くてやわらかい管(カテーテル)を血管の中に通して、下肢動脈病変の血流速度,狭窄部の圧較差の測定,細かな側副血行路の状態,病変部末梢側血流状態などを評価する検査です。DSA(Digital Subtraction Angiography)を用いることで、高度石灰化病変や足の血流も評価できる検査です。

PADの治療

PADの治療は、動脈硬化の進行を抑える全身管理と、足の血流を改善する局所治療が柱となります。

内科治療

  • 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
  • LDLコレステロール管理(スタチンなど)
  • 血圧・血糖・喫煙のコントロール
  • 運動療法:ウォーキングを中心とした「間欠性跛行改善トレーニング」
  • など

カテーテル治療
(血管内治療/EVT)

  • カテーテル治療は、主に大腿動脈(足の付け根の動脈)からカテーテル(細い管)を通して下肢動脈にアプローチして、造影剤を使って血管の詰まり(狭窄・閉塞)を確認し、病変にガイドワイヤーを通して、病変をバルーンで広げたり(風船治療)、ステント(金属の筒)を留置したりして、血流を回復させる治療です。

バイパス手術

  • バイパス術は、自己血管または人工血管を用いて、血管の詰まり(狭窄・閉塞)の先の下肢動脈に「新しい通り道(バイパス)」を作る手術です。

PADに対する
当院総合心不全センターの特色

  • 高精度のスクリーニングで見逃さない:当院では、ガイドラインに準じたスクリーニングと血行評価を行い、動脈硬化の進行度を早期に把握します。ABI/AHI+血管超音波検査での初期評価から、必要に応じて造影検査へスムーズに移行する体制をとっています。
  • 歩ける脚を取り戻す“間欠性跛行専門対応”:訪問診療、薬物治療、血管内治療を総合的に提供しています。
  • 全身の動脈硬化リスクを包括的に評価: PADと診断することは、全身の動脈硬化性疾患、つまり心筋梗塞や脳卒中のリスクが高いことになりますので、当センターでは心血管・脳血管との一体管理を重視しています。
  • かかりつけ医の先生方との連携で再発予防を支援:動脈硬化の再進行を防ぐため、紹介元の先生とも連携して継続的管理を行います。