虚血性心疾患とは
 虚血性心疾患(IHD: Ischemic Heart Disease)とは、心臓を栄養する血管(冠動脈)の血流が不足することで、心筋が酸素欠乏に陥る状態を指します。日本人における心不全の主な原因の一つであり、進行すると生命予後や生活の質に大きな影響を与えます。
虚血性心疾患(IHD: Ischemic Heart Disease)とは、心臓を栄養する血管(冠動脈)の血流が不足することで、心筋が酸素欠乏に陥る状態を指します。日本人における心不全の主な原因の一つであり、進行すると生命予後や生活の質に大きな影響を与えます。
虚血性心疾患の分類
虚血性心疾患は原因や発症機序によっていくつかのタイプに分けられます。
- 狭心症(労作性狭心症・不安定狭心症)
 動脈硬化により冠動脈が狭くなり、運動やストレスで一時的に心筋への血流が不足する疾患です。
- 急性心筋梗塞
 冠動脈が血栓などで完全に閉塞し、心筋の一部が壊死する緊急疾患です。
- 冠攣縮性狭心症(CSA)
 冠動脈が一過性にけいれん(攣縮)して血流が途絶える病態です。喫煙・ストレス・夜間の副交感神経優位などが誘因と考えられています。
- 微小血管狭心症(MVA)・INOCA
 冠動脈の大血管(冠動脈造影検査で評価できる冠動脈部分)に異常がなくても、微小血管(直径200μm以下)の障害によって虚血が起こる病態です。INOCA(Ischemia with Non-Obstructive Coronary Arteries)とも呼ばれ、女性や高齢者に多い傾向があります。
虚血性心疾患を放置すると、心筋の線維化が起こり、心機能が低下し、心不全(虚血性心不全など)の原因となったり、命にかかわる不整脈(心室頻拍など)を併発し突然死のリスクとなったりします。故に、虚血性心疾患の適切な診断と治療が、生命予後と生活の質(QOL)を大きく左右するのです。
虚血性心疾患の検査・診断
虚血性心疾患は、症状や心電図・心エコーだけでは確定診断できない場合が少なくありません。当センターでは、症状や背景から必要なカテーテル検査も用いて、病態を詳細に評価し、原因を明確化します。
- 運動負心電図検査:エルゴメーターやトレッドミルによる運動負荷中、負荷後の心電図を評価する検査で、虚血性心疾患の一般的スクリーニング検査です。
- 心臓核医学検査:ごく微量の放射性薬剤を注射して、専用のカメラで心臓を撮影することで、血流の多い部分・少ない部分を“色の違い”で可視化して、虚血性心疾患を評価する検査です。
- 冠動脈CT:造影剤を用いてCT撮影することで、冠動脈病変の狭窄度や石灰化などの病変性状を評価する検査です。
- カテーテル検査:カテーテル検査は、大腿動脈(足の付け根の動脈)や橈骨動脈(手首の動脈)から細くてやわらかい管(カテーテル)を血管の中に通して、心臓や血管の状態を詳しく調べる検査です。虚血性心疾患を評価するカテーテル検査は下記のようなものがあります。
- 冠動脈造影検査:最も正確に冠動脈の狭窄や閉塞があること評価できる解剖学的評価法で、狭心症の診断を確定したり、治療方針を決定に狭心症の診断を確定したり、治療方針を決定したりするうえで、非常に重要な検査です。
- 冠血流予備量比(FFR)/瞬時血流予備比(iFR):正確に心臓に十分な血流が供給されているかを評価できる生理学的評価法で、冠動脈造影検査に追加することで、狭心症の診断を確定したり、治療方針を決定に狭心症の診断を確定したり、治療方針を決定したりするうえで、非常に重要な検査です。
- アセチルコリン負荷試験:冠攣縮性狭心の確定診断を行う検査です。
- 冠血流予備能(CFR)/微小血管抵抗指数(IMR):微小血管狭心症(MVA)・INOCAを評価し、診断する検査です。
見逃されやすい症状の背景にある病態を「見える化」し、正確に診断することが、治療への第一歩となります。
虚血性心疾患の治療
診断結果に基づいて、患者さん一人ひとりに合った治療を行います。当センターでは、薬物療法からカテーテル治療まで、ガイドラインに沿った最適な選択肢を提案します。
内科治療(薬物療法)
- 抗血小板薬(アスピリン、クロピドグレルなど)
- 血管拡張薬(硝酸薬、カルシウム拮抗薬など)
- β遮断薬、スタチン、RA系阻害薬など
カテーテル治療(PCI: 経皮的冠動脈インターベンション)
カテーテル治療は、大腿動脈(足の付け根の動脈)や橈骨動脈(手首の動脈)からカテーテル(細い管)を通して冠動脈(心臓を栄養する血管)にアプローチして、造影剤を使って血管の詰まり(狭窄・閉塞)を確認し、病変にガイドワイヤーを通して、病変をバルーンで広げたり(風船治療)、ステント(金属の筒)を留置したりして、血流を回復させる治療です。
冠動脈バイパス術(CABG)
バイパス術は、体内の別の血管(内胸動脈(胸の動脈)や大伏在静脈(足の静脈))を使って、血管の詰まり(狭窄・閉塞)の先の冠動脈に「新しい通り道(バイパス)」を作る手術です。
虚血性心疾患の治療方針は、当院ハートチームアプローチにより、患者さん個々の「病変の性状、患者背景、長期予後を考慮した治療選択」を考え、患者さんとともに共同意思決定(SDM: Shared Decision Making)を行って参ります。
虚血性心疾患に対する
当院総合心不全センターの特色
- 中高年〜高齢者の「見えにくい狭心症」を見逃さない評価体制: 微小血管狭心症・INOCAにも対応します。
- ガイドラインに基づく生理学的評価と治療戦略: FFR/iFR/CFR/IMRで「必要な治療」を科学的に判断します。
- 心不全との関連を重視: 虚血性心疾患が原因の心不全も早期発見し、悪化を防ぎます。
- 医療・介護との地域連携: かかりつけ医・訪問看護ステーションとも密に連携し、検査結果のフィードバックを行います。
- ハートチームアプローチと共同意思決定(SDM: Shared Decision Making):虚血性心疾患に対する個別化医療に注力します。
 
      


 
       
       
       
       
     
       
        