深部静脈血栓症・下肢静脈瘤とは
深部静脈血栓症(DVT)は、足の深い部分にある静脈に血のかたまり(血栓)ができる病気です。肺血栓塞栓症(PE)を引き起こすリスクがあり、命にかかわることもある重大な疾患です。一方、下肢静脈瘤は足の表面近くを走る静脈の弁が壊れ、血液が逆流・うっ滞して血管が拡張・蛇行してしまう病気です。「美容」の問題と思われがちですが、放置すると皮膚炎・潰瘍・慢性静脈不全に進行することもあります。片脚だけのむくみや重だるさの症状は、深部静脈血栓症(DVT)、下肢静脈瘤ともに、しばしば認められます。ふくらはぎの腫れや痛み、熱感は、深部静脈血栓症(DVT)で多くみられる症状です。下肢静脈瘤は、脚の血管がボコボコと浮き出て見えるという症状が代表的ですが、下肢静脈瘤が進行した慢性静脈不全では、皮膚の変色やかゆみ、皮膚潰瘍などの症状がみられることもあります。
深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の検査・診断
当院では、早期発見と血栓塞栓症のリスク評価することを重視しています。
- 下肢静脈超音波検査:超音波を用いて血栓を描出し、血栓の局在や性状を迅速に判断できます。また、下肢静脈瘤の診断、治療方針決定に必須の検査です。
- Dダイマー(血液検査):血液検査の項目で、血栓が分解された際に生成される物質の一つであり、血栓の存在を間接的に評価するマーカーです。
- CT肺動脈造影:PEが疑われる場合は追加し、肺動脈内の血栓の有無を評価できます。
- 血管造影検査:下大静脈フィルター留置の際などに用います。
深部静脈血栓症・下肢静脈瘤の治療
状態や重症度に応じて、薬物治療・血管内治療・手術を適切に選択します。
深部静脈血栓症(DVT)の治療
- 内科治療:抗凝固療法と圧迫療法
主たる治療は、抗凝固療法になります。多くの場合、経口抗凝固薬(DOAC)を用います。また、腫脹や疼痛などの下肢症状の改善のため、かつ慢性期合併症の予防のために弾性ストッキング着用による圧迫療法も併用する場合が多くあります。 - 下大静脈フィルター留置術(IVCフィルター留置術)
抗凝固療法ができない状況で、肺塞栓血栓症(PE)の発症リスクが高い場合に行う治療です。カテーテルを用いて、下大静脈にフィルターを挿入し、肺塞栓症を予防する治療になります。
下肢静脈瘤の治療
- 圧迫療法(弾性ストッキング):保存的治療として最も重要な治療法になります。ただし、末梢動脈疾患(PAD)が併存する場合は、弾性ストッキングはPADを増悪させる可能性があり、PADの有無の評価のうえ、圧迫療法は行われます。
- 血管内レーザー焼灼術(EVLA)
静脈瘤を呈している大伏在静脈や小伏在静脈に細くて柔らかい管(カテーテル)を挿入し、血管内からレーザーを照射し、逆流する静脈を閉塞する治療になります。 - 硬化療法:静脈瘤に硬化剤を注入する治療法で、泡状硬化療法:フォーム硬化療法などがあります。
- 下肢静脈瘤手術:.静脈抜去術(ストリッピング手術)や高位結紮術があります。
深部静脈血栓症・下肢静脈瘤に対する当院総合心不全センターの特色
- DVTの早期診断と肺塞栓症予防に強い: 下大静脈フィルター留置術まで行えるDVT診療を行っております。
- すべて日帰りで対応可能な体制: 高齢者・介護施設入居者の方にも迅速に対応できる体制を整えています。
- 近隣医療機関との連携強化中:整形外科や産婦人科など他科連携でDVTリスク症例を迅速に精査加療することに注力しています。

